未経験Webディレクターを採用するメリットとデメリット

Web制作業界は常に変化の波が押し寄せ、その中で勝ち残っていくためには、新しい視点やエネルギーを取り込むことが不可欠です。

今回は、Webディレクターの採用というテーマにおいて、経験豊富な即戦力だけでなく、「未経験」という新たな可能性に目を向けることの意義と、それに伴う現実的な課題について、具体的な事例を交えながら深く掘り下げていきたいと思います。

即戦力じゃない?一旦考えてみましょうよ。

経験豊富なWebディレクターの獲得競争は激化の一途を辿っており、採用コストの高騰や、せっかく採用できても企業文化への適応に時間がかかる、あるいはミスマッチといったケースも少なくありません。

特に、柔軟性とスピード感が求められるベンチャー企業においては、既存の枠にとらわれない人材戦略が求められます。

そんな中、Web業界への熱意を持つ若手や、異業種で培ったスキルをWebディレクションに活かしたいという意欲的な人材が、新たな選択肢として浮上しています。彼らは、スポンジのように新しい知識を吸収し、固定観念にとらわれない発想で、組織に新たな風を吹き込んでくれるかもしれません。

未経験Webディレクター採用のメリット

未経験者の採用には、以下のような具体的なメリットが期待できます。

  1. 採用コストの抑制: 一般的に、未経験者の採用における給与水準は、経験3年以上のWebディレクターと比較して平均で20~30%程度低い水準にあります。(求人情報サイトIndeedの過去1年間のデータ分析より)また、人材紹介会社を利用する場合でも、年収に応じての手数料のため、コストメリットは明確です。これは、初期投資を抑えたいベンチャー企業にとって、無視できないメリットと言えるでしょう。
  2. 企業文化への高い順応性: これまでの職場で培われた固定観念がない分、自社の企業理念や働き方に素直に馴染んでくれる可能性が高いです。創業期から大切にしてきた価値観や、独自のワークフローを浸透させやすく、組織の一体感を醸成しやすいと言えます。
  3. 驚異的な成長ポテンシャル: Web業界は常に新しい技術やトレンドが生まれるため、学び続ける意欲が不可欠です。未経験者は、吸収できる知識やスキルが多いため、適切な教育と機会を提供することで、目覚ましい成長を遂げる可能性があります。自社で基礎から育成することで、将来的に組織の中核を担う人材へと育つ可能性を秘めています。
  4. 異業種からの新たな視点: 例えば、営業経験が豊富な未経験者であれば、顧客折衝能力や提案力といった、Webディレクターに求められる重要なスキルを既に持っている可能性があります。また、全く異なる業界の知識や経験は、既存のWeb制作の枠組みにとらわれない、新しい発想や企画を生み出すきっかけになるかもしれません。
  5. 長期的なエンゲージメントの可能性: 入社時から自社で育成に関わることで、会社への愛着や貢献意欲が高まりやすく、結果として長期的な定着に繋がる可能性があります。キャリアパスを明確に示し、成長をサポートすることで、エンゲージメントの高い人材を育成できるでしょう。

未経験Webディレクター採用のシビアなデメリット

もちろん、未経験者の採用には、以下のようなデメリットも考慮する必要があります。

  1. 初期の教育コストと時間: Webディレクターとしての基礎知識やスキルを習得させるためには、OJT(On-the-Job Training)をはじめ、体系的な研修プログラムの実施など、相応の教育コストと時間が必要となります。経験豊富な社員による指導や、外部研修への参加なども検討する必要があるでしょう。
  2. 立ち上がりまでの生産性の低さ: 即戦力とは言えないため、入社後しばらくは、経験豊富なメンバーのサポートなしには業務を遂行することが難しい場合があります。プロジェクトの初期段階においては、進捗管理や品質管理において、より丁寧なフォローアップが求められます。
  3. 適性と不確実性との戦い: Webディレクターには、コミュニケーション能力、段取り力、問題解決能力など、多岐にわたるスキルが求められます。未経験者の場合、これらの適性を採用選考の段階で見抜くことが難しい場合があります。ポテンシャル採用に加えて、適性検査や複数回の面接などを通じて、慎重に評価する必要があります。
  4. 早期離職のリスク: Webディレクターの仕事内容に対する理解不足や、想像とのギャップから、早期に離職してしまうリスクも考えられます。採用前に、業務の具体的な内容や、キャリアパスについて丁寧に説明し、相互理解を深めることが重要です。

未経験Webディレクターを「戦力」に変えるための実践的アプローチ

未経験者を採用し、会社の成長に貢献してくれる戦力へと育成するためには、戦略的なアプローチが不可欠です。

  1. 体系的な研修プログラムの設計: Webディレクターに必要な基礎知識(Webサイト制作の基礎、SEO、Web広告、アクセス解析など)を習得するための研修プログラムを、入社後の段階に応じて用意しましょう。外部のオンライン学習プラットフォームや、業界団体が提供する研修プログラムの活用も有効です。
    • : 「Webディレクター入門講座(座学3週間)」、「OJT期間中の課題設定とメンター制度」、「3ヶ月ごとのスキルチェックとフィードバック」など
  2. 経験豊富な社外メンター制度の導入: 新入社員一人ひとりに、経験豊富な社外メンターとして配置し、日々の業務指導やキャリアに関する相談に乗る体制を整えましょう。社外メンターを参考に社内メンター候補の成長にも繋がるというメリットもあります。
  3. 段階的な業務アサインと明確な目標設定: 入社直後は、比較的難易度の低いタスクからスタートし、徐々に責任範囲を広げていくことで、無理なくステップアップできる環境を整備しましょう。各タスクごとに明確な目標を設定し、達成度を評価することで、成長を促します。
  4. チーム全体でのサポート体制の構築: 未経験者の育成は、チーム全体の協力が不可欠です。経験豊富なメンバーが積極的に知識やノウハウを共有し、新入社員が安心して質問できる雰囲気を作りましょう。チーム内での勉強会やナレッジ共有会なども有効です。
  5. 定期的なキャリア面談の実施: 半年に一度など、定期的にキャリア面談を実施し、本人の希望や適性に合わせて、中長期的なキャリアパスを一緒に描きましょう。目標設定や必要なスキル習得のサポートを行うことで、モチベーションの維持と成長を促進します。

一歩踏み出す「勇気」を持てばメリットは小さくない

競合他社はすでに未経験Webディレクターの採用を始めています。

未経験のWebディレクター採用は、初期投資や育成期間が必要となるものの、上手く育成できれば、コストメリットだけでなく、組織の活性化や新たな視点の獲得、そして長期的な成長に大きく貢献する可能性を秘めています。

今回の記事が、貴社のWebディレクター採用戦略を再考し、新たな可能性に目を向けるきっかけとなれば幸いです。

もし、未経験者の採用や育成に関して、さらに具体的な情報やアドバイスが必要な場合は、どうぞお気軽にご相談ください。微力ながら、貴社の発展に貢献できれば幸いです。

某・人材エージェントはどこの会社も欲しがる30台の人材の提案より、人口の多い40代、ポテンシャル採用の20代の提案に振り切る方針もあるようです。提案数の多い人材の活用方法も併せて検討することが、この時代の日本における採用の最適解かと。